形状記憶する身体──痛みと癒しの再教育【セラピストが語るリラクゼーションの本質】

2025.10.19


形状記憶する身体と神経の再起動

──使い方を“覚える”身体、思考を“なぞる”

正しい姿勢をとるのがしんどい。
力を入れているつもりはないのに、気づけば力んでいる。
いつも同じところが辛くなる。

それは「姿勢が悪い」からでも「意識が足りない」からでもありません。
──身体が、“その形”を覚えてしまったからです。

筋肉は使い方を学び、神経はその緊張を記憶する。
つまり、私たちの身体は“日常を形にして生きている”のです。
 
 

身体は、日常の“姿勢”を記憶する

私たちの身体は、常に「どう動くか」「どう支えるか」を学び続けています。
同じ姿勢を続けると、筋肉と神経はそれを“正解”として記憶してしまう。

たとえばデスクワークでは、肩をすくめる姿勢や首を前に出す癖がつきやすく、
その形が“形状記憶”のように身体に刻まれていきます。

筋肉は使い方を覚え、神経はその緊張を再現する。
一度そのパターンが固定されると、無意識のうちに同じ筋肉ばかり使うようになり、
反対側の筋肉は”動き方を忘れてしまう”

これが“バランスの崩れ”であり、同じ箇所ばかりが凝る原因。
身体は、日常の姿勢を“形”として覚えているのです。


 
心もまた、同じ思考・感情を記憶する

身体が“形”を覚えるように、心もまた“状態”を覚えます。
たとえば、常に気を張っている人は無意識に肩が上がりやすく、
「緊張している姿勢」を心と体の両方で再現してしまう。

感情や思考は一瞬で消えるものではなく、
筋肉や呼吸のパターンとして身体に“保存”されていくのです。

たとえば──寝る前の“反省会”

布団に入ってから、
「あの時なんであんなこと言ったんだろう」
「言わなきゃよかった」
「あの人のあの言葉、あの態度……どうすればよかったんだろう」

そんな思考のループを繰り返した経験、きっと誰にでもありますよね。

でも実はこの“寝る前の反省会”こそが、脳にネガティブな記憶を強く焼きつけてしまう原因の一つ。
習慣化すると、ネガティブ思考を姿勢として癖づけてしまうのです。

筋肉に置き換えると、
この“心の緊張”は首の付け根──頭を支える部分に現れます。
反復思考は、脳と首を同時に固め、やがてそれを形状記憶してしまう。

こうして、寝る前の反省会が習慣化すると、
無意識のうちに“日中も心と体が緊張し続ける”という負の連鎖が起きてしまうのです。

リラクゼーションの時間とは、
この“心と体の姿勢”を一度ゼロに戻すための時間。
安心の記憶を上書きする、神経のリハビリのようなもの。

嫌なことは「寝て忘れろ」と言いますよね?
けれど、寝る前に嫌なことを思い出して脳に記憶させたまま眠ると、眠っている間もどこかで身体は緊張し続けます。

「よく眠れない」「朝起きても疲れが取れない」──
そんなとき、もしかすると体はまだ“戦っている”のかもしれません。

眠るというのは、ただ意識を手放すことではなく、
身体も心も脳も“安心して休む”こと。

その時間があってこそ、
私たちは新しいポジティブを迎え入れることができるのです。
 
 
 

形状記憶の連鎖が、こりや疲労を深める

形を覚えた筋肉は、動きの自由を失っていきます。
たとえば前かがみ姿勢が続くと、胸の筋肉は縮み、背中の筋肉は伸ばされ続ける。
この「縮む側」と「引き伸ばされる側」のアンバランスが、血流の滞りや代謝の低下を招き、疲労が抜けにくくなる原因です。

やがてこの“使い方の偏り”が神経にも影響を与え、
「この姿勢が安全」と脳が誤認することで、筋肉はリラックスの仕方を忘れてしまいます。

こうして生まれるのが、形状記憶の連鎖。
筋肉が硬くなることで血液が滞り、酸素不足が痛みを呼び、
その痛みがさらに身体を緊張させる──というループが始まるのです。

この連鎖を断ち切るには、筋肉を“無理に伸ばす”のではなく、
神経が「もう力を抜いても大丈夫」と感じられる環境をつくること。
“安心によって形を変える”という癒しのプロセスへと繋がっていきます。
 
 
 

癒しとは、“形を戻す”ことではなく、“形を変える”こと

コリを改善するには、原因を取り除くことが鍵になります。
けれど、「仕事をやめる」「環境を変える」ことは現実的ではありません。
だからこそ、私たちは“戻す”のではなく、“変える”という選択をするのです。

硬くなった筋肉を無理にほぐすのではなく、
「もう力を入れなくていい」と神経に教え直す。
この「再教育」こそが、癒しの本質です。

筋肉は触れられ方を、神経はそのときの“安全”を記憶します。
やさしい圧、F分の1ゆらぎのリズム、そして呼吸の共鳴──
これらが重なった瞬間、身体は“守る”モードから“委ねる”モードへ切り替わります。

その変化は、痛みを消すのではなく、
**「痛みを安心のサインに変える」**こと。
「もう戦わなくていい」と身体が理解した瞬間、
筋肉の形も、心の形も、静かにほどけていきます。

癒しとは、“形を変える”こと。
その変化を支えるのが、セラピストの手であり、
“安心”という名の再教育なのです。

セラピストの手は、働きすぎた筋肉と、
動きを忘れてしまった筋肉に触れて対話することができます。

その対話によって、筋肉たちは“休み方”“動き方”を思い出していく。

身体が「オン」と「オフ」を学べば、
神経もまた「オン」と「オフ」を切り替えられるようになる。
そして自律神経が正常に働くと、心も“切り替え”を学習していく。

──どんなに頑張った日でも、
眠るときは穏やかな眠りが迎えられますように。
 
 
 
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